ストーリー

不穏な空気が漂う新世紀。
そんな時代にあってもなお、利便と不便の狭間に生き残る町があった。 
繁栄と衰退を繰り返すのが、世の常だというのならば――。
この町もまた、そんな宿命から逃れられない、常識の檻に捕らわれた町になるはずだった。

蓬莱町。

かつて、炭鉱という消費時代が生んだ熱気に、一欠けらの夢を見た山間の町。
時代が過ぎ、火を失った炉が冷たく錆び付いていくように、
この町の未来も閉じようとしていた……。

そんな最中、事件は幕を開けた。

『神隠し』……。

迷信多きこの地にあって、その奇怪な事件はそう名付けられた。
名状し難い闇の中に飲み込まれていく者達。
そうして、一時は存在を抹消された者達は、多くの災いと共に再びこの地に忌まわしき『帰還者』として還ってくる。

影から湧き出た狂信者集団。
凶暴化し始めた帰還者達。
狂気を呼び覚ます月光の下、繰り返される猟奇事件。
生贄を欲するかのように、血の色に染まる湖。

蓬莱の町はゆっくりと、そして確実に狂いはじめていた……。

蓬莱に住む叔母の元に身を寄せる少年『美作 直樹』。
幼少期に起きたある奇怪な事件に巻き込まれ、かけがえのない家族と記憶を失う。
一度は忌まわしい土地を離れた直樹だったが、育ての親である祖父母の他界を機に、再びこの地に足を付ける。

過去の惨劇に目を背け、仮初の平穏を過ごす直樹であったが――。
ある日を境に、失った記憶の残滓が何かを伝えんと、彼の心を責め立てはじめる。

失われた記憶の謎を追い、直樹はかつての惨劇の地……永遠の霧に包まれた、呪われた廃墟の町に辿り着く。

そこで、見付かった妖しい輝きを湛える紅の指輪……。
指輪のもたらす光が怪異を引き起こし、親しい友人をも変貌させていく。
不運にも指輪に魅入られた幼馴染の少女『水無月 春霞』。
彼女の口から囁かれる夢現の言葉に、閉ざされた過去の扉が静かに開かれていく。

時を同じくして、湖に浮かぶ洋館で一人の少女が何かを感じ取っていた。
幻想怪奇の娘……『姫代 乙羽』。
彼女が見せる紅の悪夢が、指輪の謎と交差する時――。
滅びた二つの血族に翻弄された者達が、闇の中で蠢きはじめた。

それはまるで、二匹の紅い蛇が互いの尾を喰らおうとする姿にも似ていた。